ガスは悪条件?霞でつくる写真の空間表現

ガスった時こそチャンス

風景写真の人気ポイントで撮影しているとガス(霧や靄、または雲など)が出てきて撮影を諦める人を見かけます。しずかにその場を去ってくれるなら構わないんですが、しばしば「ガスってきた。今日はダメ、ヤメヤメ。」なんてセリフを置いていく方がいます。

人がどんな写真を撮ろうが知ったこっちゃないですし、こちらは霞がかった風景も好きでテンションがあがる瞬間なわけで、自分の引き出しが少ないからって聞こえるように捨てゼリフをはいて周りを巻き込まないでくれと感じるわけです。

たいへん愚痴っぽい前置きになりましたが、今回はガスったからと諦めず(というのも変ですね)楽しんでいこうよという話です。何事も見方を変えることで楽しむ姿勢を忘れずにいたいですね。撮る人が少ないということは独自の視点が開けるとも言えるわけですから。

ガス・霧・靄ってどんな条件?

ガスがあるとわずかな距離の差が顕著に

さて、ガスったら帰る人が一定数いるということは手放しで上手く撮影できる条件ではないということは言えそうです。ではガス・霧・靄がかかった条件はどんな環境なのか考えてみます。

1. 光が柔らかい

まず一つ目。霧に飲まれた場所は空気中の細かな水滴によって光が散乱しとても柔らかな状態になります。シャープな影は出ず、白から黒のグラデーションの滑らかな階調を見つけることができます。

グラデーションが豊かということは晴天でコントラストの強い状態に較べ、被写体のフォルムや質感が表現しやすい条件です。オーバーに振れば柔らかな光、アンダーに振れば妖艶な雰囲気といったバリエーションも考えられますね。

2. 空気遠近法がブーストされる

二つ目。空気遠近法というのは近景から遠景までの間の空気の量の差によって生まれる見え方の差を利用して遠近感を画面内に再現する手法です。霧がかった条件は通常の空気よりもさらに密度の高い空間が生まれるので、ごくわずかな距離の差でも彩度やコントラストが顕著に変わる空気遠近法がブーストされたような条件であると言えます。

遠景の視程は失われますが、代わりに近景と中景のコントラストの差を利用して主題の存在感を際立たせるといったことがしやすいシチュエーションと考えることができます。

3. 特定の色が強調しやすくなる

二つ目の空気遠近法とも関連することですが、ガス(霞)がかかると遠景に行くほど霧の影響で彩度が下がります。これを逆手に取れば、影響が少ない手前のオブジェクトの色を強調することができる条件とも言えます。立体感だけでなく色のコントラストも近景と遠景で差が大きくなるということですね。

アプローチの例

霧を使った画面の構成

霧の条件の特性を利用したアプローチの例を冒頭の写真を使って説明してみます。撮影データは 200mm 1/400 F8 ISO100です。

主題は並んだコバイケイソウ(黒い植物)と池塘に映り込んだリフレクション。主題となるコバイケイソウの塊をしっかり被写界深度に収め、そこを基準に霧の中の雰囲気を残せる露出に合わせていきます。気持ちオーバー目、ヒストグラムの山が中央より少し右に寄るぐらいの露出を選びました。

霧の中にある雰囲気にするために黒が黒すぎない露出に合わせると主題部分のコントラストがあまり上がりません。そうなると距離が近いことでクリアに見えやすい手前の岸辺が強くなりすぎるので、手前の岸は被写界深度の外に出してしまうことでビジュアルウェイトを下げます(ぼかすことでコントラストを下げる、意識外であることを表す)。遠景は主題に連なる中央の赤い葉のラインと色相で対比を作ることで分離(そうなるアングルを見つける)。遠景の中では右から左にかけて霧によって彩度が落ちていくことを利用して前後の空間量の差を見せるといった具合に組み立てます。

その結果、絞りはF8、シャッタースピードは1/400というところに収まりました。特に動きのないシーンなのでカメラのモードはAモード(絞り優先オート)でOKですが、画面の明るさのコントロールを露出補正で行うよりもM(マニュアル)モードにしてシャッタースピードでコントロールする方が狙ったところに落とし込みやすいシーンです。

オブジェクトと空間の流れ

遠景部分も補色対比を使った手前側(右側)と霧の中へ消えていく左側で差をつけることで奥へ向かう流れを演出できます。これによって手前の草、浮島、主題のコバイケイソウ(リフレクション)、奥へという空間を表現するアプローチです。(上の図が撮影時に捉えているボリュームのイメージです)

というわけでガスったから退散と言わず、その時だから見られる光景を表現していけると楽しいですねという話でした。

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