セオリーを崩して狙う心象を表現する構図

2018-08-08

頂を見上げる心境とは

夏真っ盛り。休暇に一眼レフやミラーレス一眼を持って登山をするという方もいるのではないでしょうか。今回はそんな山での感情を表現する構図を考えてみます。ちょうど北八ヶ岳の天狗岳でそんな構図にチャレンジしてきたので、それを題材に進めます。やっていることはシンプルですが、複合要素が多いので意外と盛りだくさんです。

風景はパンフォーカスがベストとは限らない

今回の構図にはいくつかの定番(セオリー)を意図的に逸脱する要素が含まれているのですが、そのうちの一つ目は前景のアウトフォーカス。ピントは主題の山頂に置きながら手前の斜面を前ボケさせています。

このボケを作るために開放のF4から2段ほど絞ってF8とした理由は2つあって、ひとつはある程度のディテールを認識できるボケ具合であること、もう一つはシャッタースピードをやや遅めにすることで強い風があることを感じさせるという意図からです。

斜面に張り付き山頂を見上げている、そして手前の斜面は周辺視野の世界ということを表すための領域になるわけです。

水平もあえて傾ける

意図的にセオリーを外した要素の二つ目は水平。実際の構図に補助線を入れたものと水平に撮影したものを並べてみたのでスライダーを左右に振って見てみてください。

水平を崩したのにもいくつか意図があるのですが、大きな理由としては感情を表現するために生真面目に水平を出してしまうと面白みがスポイルされてしまうからです。「これから登るぞ」という気持ちを表すのに、水平で落ち着きを与えてしまうというのはまったくもって矛盾です。

水平を崩すことで得られる対角線の効果

そして同時に主題である山頂を対角線上に配置することができました。前景のアウトフォーカスと対角線(パースがかかりやすい)の複合効果により、手前から奥へ向かう迫力のある視線が現れます。

狭い画角だからこそ作れる奥行の密度

狭い画角が作る奥行の密度

今回の構図はアウトフォーカスとカメラを傾けることで構成してみましたが、実はそれらの要素を組み合わせたことで得られた効果がもう1つあります。

それが35mmという画角。

一般的にはこの手の被写体を撮影する際、超広角や標準ズームの広角端を使ってパースを強くかけることが多いと思います。しかし、アウトフォーカスや水平崩しを組み合わせたことで奥へ向かう視線の流れは十分に作れたことで広角としては35mmという狭めの画角を選べました。

焦点距離が伸びる(画角が狭くなる)ことによって相対的にひとつひとつの要素を大きく迫力を伴って描くことができます。

という感じで積極的にセオリーを外してみることでいつもと違う表現にチャレンジしてみると面白い!という話でした。ナイスネイチャーしにいこう!