Classic Chromeで岩場の緊張感を強調するRAW現像

切り立つ岩から望む奥秩父山塊

せっかくFUJIFILMのX-T20を持っていったのでフィルムシミュレーションを活かしたRAW現像をやってみようと思います。

ロケーションは白駒の池の近くにあるにゅうの山頂。足下はストンと切れ落ちた崖、眼前には押し寄せる雲海、遠くには東京・埼玉・山梨の境あたりの奥秩父山塊が広がっています。陽が昇ってきてこれから一日が始まるという時間帯、真夏とは言え気温は低く、標高2000mを超える山頂には強く冷たい風が吹き付けてくる。そんな空気をClassic Chromeをベースにして再現していきます。

RAW現像の方向性を確認する

現像の方向性を確認する

撮影時に意識して撮影はしていてもいざRAW現像を始めると方向性を見失ってしまうこともあります。手を動かす前に、この写真をどんな気持ちで撮影したのか、どう見せたいのかといったことを振り返りつつ、手を入れる場所を整理します。

この写真で表現したいのは場の空気です。

緊張感を演出していくために目の前の岩のエッジを強調し、麓をかろうじてディテールが分かる程度に持ち上げ高低差を作りながら、奥の山塊は少しディテールを曖昧にして遠近感を出すといったところがポイントになります。

ベースを作る

方向性が確認できたらやっていきます。今回はハードな印象を出していきたいのでフィルムシミュレーションの中でも硬調なClassic Chromeをベースにします。同じく硬めのトーンを持つVelviaではない理由は彩度。冷たい空気と緊張感をもったシチュエーションを作り込むといった場合は低彩度の方が向いています。(左Adobeカラー・右Classic Chrome、その他は未補正です)

スライダーを切り替えながら比べてみてもわずかな変化ですが、全体的にトーンが硬くなったのがわかると思います。

奥から作る

フィルムシミュレーション(カメラプロファイル)を決めたら背景からやっつけていきます。ここでは段階フィルターでざっくりとマスクを作ってから、ブラシで岩の部分を除外してから空気遠近法に則って遠景であることを強調する方向性の調整をしています。

ケースバイケースなのであまりパラメータを書き出しても意味はないのですが編集した内容は以下の通りです。

色温度-20
ハイライト-40
シャドウ20
明瞭度25
かすみの除去-12

調整の内容は個別のケースなので軽く流してもらうとして、背景から処理した理由の方が重要です。絵画などでは一般的な手順ですが、もっともあやふやになる背景から組み上げていくことで手前側のディテールをやり過ぎないで済むというテクニック。絵画の場合、筆やペンで描き込んでいくという性質上、ついついディテールにのめり込んでしまい全体のバランスを欠いてしまうのを防ぐという目的からこのような方法をとることがありますが、写真でも十分に有効な方法です。

岩のエッジを立てていく

続いてメインの岩のエッジを立ち上げていきます。こちらは先ほどの背景の段階フィルターとは変わり、補正ブラシを使ってマスクを作ります。上の図を見てもらった方が理解が早いと思いますが、光りの当たるエッジ部分のみをハードにディテールを起こすようなマスク範囲になっています。

パラメータは以下の通りで、コントラストを上げる方向で調整しています。暗部のディテールを起こす場合、シャドウを持ち上げるということが多いかと思いますが、今回の様にハードエッジを立てて行く場合は白レベルやハイライトを持ち上げて幅を引き出した方がベターです。

コントラスト10
シャドウ2
白レベル20
黒レベル-2
明瞭度20

色味を調整して仕上げ

HSL調整

最後に全体(というか中間)の調整をして仕上げです。高低差を演出するために基本調整で右下領域のディテールがよく見れば分かる程度にシャドウを持ち上げ、全体の青味をHSL/カラーパネルで調整します。

切り立つ岩から望む奥秩父山塊

こんな感じで、フィルムシミュレーションClassic Chromeを活かした緊張感を強調するRAW現像は完成です。今回はフジフイルムのカメラを使ってみましたが、低彩度かつ硬調といった方向に振っていけば同様のテイストは出せると思いますので、ハードなイメージの写真を作る参考にしてみてください。

おまけ

余談ですが、フォトレタッチに良さそうなペンタブレットがWacomからリリースされていることを知りました。Intuos Proシリーズの描き心地は満足しているものの、常々ファンクションボタンが邪魔だなと思っていてボタンレスの選択肢を作ってくれないかと思っていたのでこれは嬉しいプロダクトです。

今回の作業の中の段階フィルターのマスク削りや補正ブラシなどはペンタブレットがあると作業効率が段違いです。筆圧検知も2048レベルですし描画エリアも広いので使いやすそうですし、Intuos Proと比べリーズナブルなプロダクトラインなのでオススメです。(というかサブに欲しい)