モノクロームでコントラストを設計するRAW現像

モノクロームはカメラで行うデッサン

最近RAW現像のプロセスを少し変えてみました。タイトルですでにお察しかと思いますが、モノクロームをベースにしながら仕上げていくという方法です。私のキャリア的には高校生の頃に戻ったのかなというデッサンに似たプロセスだったりするのですけど、初心や基礎というのはいつだって大事です。モノクロームでしっかりとコントラストを設計することで視線の誘導や各色相の明度をどのレベルに落ち着かせるかといったことが明瞭になりました。

デッサンとは?

白から黒までのグラデーションで表すモノクロームはカメラで行うデッサンのようなものです。デッサンとは鉛筆や木炭などを使ってモチーフ(被写体)の構造を理解したり光が与える影響を読み取ったりするトレーニング。色に惑わされずにコントラストを操りながら描写していく様はモノクローム写真を仕上げていく様子そのものです。

大きなコントラストを作る

前置きはこのあたりにして、実際に私が最近実践しているプロセスです。現像スキルカテゴリの記事ですが、細かい設定や手順などは主旨がボケてしまうので今回は省きます。

WBやレンズ補正などのごく基本的な設定を済ませたらモノクロームに変換してしまいます。この時点では画面全体のコントラストを見ていきます。現場で感じた大きさ・奥行・湿度などを思い出しながらそれらを表現(再現ではありません)するためのコントラストを設計します。

当然、現地で印象に残ったのでこの構図ということはありますが、その意図をよりハッキリとさせるためにこのようにコントラストを設計することにしました。

対角線の岩のラインを中心に左側の暗領域と右側の明領域という大きな要素以外に、奥と手前の滝の距離の対比をコントラストの質を変化させることで明確にする方針をたてました。デッサンを繰り返す中で覚えた「手前は克明に」「奥は柔らかく」描くとコントラストの質を分けることで、「見たまま」ではなく「見た印象」を感じさせる距離感を演出するという手法です。

大きな手順としては最初に画面全体の大きなコントラストを作り、その後ディテールを描き分ける細部のコントラストを整えるといった工程になります。

設計したコントラストを踏まえてカラー現像をする

モノクロームでコントラストの設計ができたら、それをベースにカラー現像をしてみます。Lightroomなら仮想コピーを作って比較ビューで左右に並べながら作業すると全体のバランスを参考にしやすいのでおすすめです。

ここまで作業したところでベースはOKです。ここから手前と奥の質感の対比などをつくっていくためにPhotoshopやNik Collectionといったツールを使って仕上げていきます。

前後でコントラストの質を分ける

最初に設計したコントラストとPhotoshop/Nikを経て作ったコントラストのビフォー・アフターです。全体的にギラギラして大味になっていたディテールのコントラストを抑えながら、手前側は逆により細かなディテールを詰めています。

モノクロームで見るとアフターの方が鈍く見えるところはありますが、手前の滝や岩はこの滝(秩父華厳の滝)独特の赤い岩と苔という色のコントラストなども加味した結果です。

カラー完成手前

先ほどのモノクロームで確認したコントラストをカラーにも適用してみました。概ね意図した状態に近づいてきましたが、気になるのは手前の岩・滝の迫力です。

最初に設定したモノクロームと比べてみるとディテールを起こしていく過程で手前のシャドウが浅くなっていることが原因だとわかりますので、その点に留意しながら最終的なバランスを調整して仕上げます。

完成

手前側中心にシャドウの引き締め(焼き込み等)をして完成です。最後にどの程度違いが出たか確認してみます。

パッと見では分かりづらいですが、画面下半分がシャドウを引き締めたことでクリアになり遠近感が強調されています。(埋もれていたのを戻したといった方が正確ですね)

モノクロームはコントラストの設計を考える好材料

無彩色の白から黒までの階調のみで表現するモノクロームは画面のなかのコントラスト設計を考える好材料です。最終的にカラーの写真として仕上げるとしても、ディテールはどこまで求めるのか、はたして今見ているコントラストはバランスが取れているのかといったことを冷静に判断することが出来るのでとても学びが多いと感じています。

デッサン的な言葉の補足

文中にディテールを「詰める」「起こす」といった言葉が出てきます。この手の表現はデッサンをやっていると日常的に出てくるのでついつい使ってしまうのですが、peingで質問をいただき確かに分かりにくくしてしまっているかも、ということで少し補足しておこうと思います。

ディテールを詰める

ディテール(細部)の描写の密度を高めるときに使いがちです。密度を上げることで近さや質感を強調することができます。

ディテールを起こす

詰めると似たニュアンスがありますが、こちらはより際立たせるといった意味合いで使いがちです。ハイライトをより意識してディテール描写を追い込むときにこちらの表現を選んでいるような気がします。

ディテールを抜く

こちらは「詰める」や「起こす」の逆のニュアンスになります。必要以上に細部が見えてしまっているときに弱めたり密度を薄くしたりして余白へ向けての視線の流れを阻害しないように処理したりする場合にこの表現をすることがあります。