彼岸花で理解する色(色相・明度・彩度)の関係性

彼岸花とカエル

彼岸花(曼珠沙華)は標準露出で撮るとうまくいきにくい?

秋の到来を告げる彼岸花。
鮮烈な赤と撮り方によって様々な表情を見せる造形も魅力の被写体です。

SNSやフォトコミュニティでも9月になると彼岸花の写真を見る機会が増えますが、ハイキー・やローキーに振った仕上げが多く、中庸な露出の写真は少ないように見受けられます。

夜露や雨の水滴に輝くハイキーな仕上げや、妖艶なイメージを醸すローキーな仕上げは確かに定石ではあるもののなぜ標準的の写真がすくないのか?その理由を探ってみることで色についての理解が深まるのではないかと思います。

標準露出で撮影する彼岸花がなぜうまくハマらないのか?ではどうすれば上手く構成することができるのか?といったことを、実際の写真を分解しながら考えていきます。

色の特性を知っておく

まず彼岸花の写真を分解する前に色の基本的な特性を押さえておきます。

色相環

ざっくりと私たちの周りには上図のような色があり、色の種類の違いを色相といい、明るさは明度、鮮やかさは彩度といいます。その関係を分かりやすく表したのが色相環で、便宜的に12色に分類したものを12色相環と呼んでいます(分類の仕方で様々な色相環があります)。これら3つの要素はそれぞれが影響しあう関係性があるものの、明度と彩度は分かっても色相って何?という方も多いような印象があります。

明度による彩度の変化

色を球状の空間で表す色立体模型というものがあるのですが、現物を見ずにいきなりそれを理解するのは難しいので標準の色相環に明るさと暗さを加えたものを並べてみました。単純に白と黒を加えただけですが同じ色相でも明るさが変化すると彩度も影響を受けるということが分かります。具体的には彩度が下がっています。

明度の変化により彩度が影響を受けるというのは先ほどチラッと触れた色立体模型を見ると分かりやすいです。あまり馴染みのない模型ですがこれを見ると各色相の純色はどのぐらいの彩度を持っていて、明度・彩度・色相はそれぞれどう関連しているのかが視覚的にズバッと分かります。ちょうどいい動画を見つけたので以下に紹介します。説明がちょっと長めですが、色相によって最も彩度の高い色の明度が違うということが視覚的に理解できるかと思います。(純色やそれぞれの関係性などについては長くなりすぎるのでここでは触れません。記事末で参考になる書籍を紹介しています)

彼岸花の写真に含まれる色の関係性を分解してみる

さて色の特性をざっくりとですが踏まえた上で彼岸花の写真がどんな構成になっているのか分解してみましょう。

いわゆる撮って出し

題材にするのはこちらの写真。冒頭の写真の調整前の状態です。撮影状況としては曇の日の午後、フラットな光線状態です。

この画面を構成している色の要素はほぼ4:4:2で緑と赤、そしてわずかに黄色味のある白に近い領域です。話がややこしくなるので今回は白っぽい部分は無視して概ね赤と緑ということにして進めます。

先ほどの色相環の図を思い出してください。赤と緑はどちらもちょうど真ん中あたりの明度で向かい合う位置、つまり明度差がなく彩度がとても高い色同士の補色関係です。ちょっとモノクロームで見てみましょう。

赤と緑は明度差が少ない

どうでしょう?カラーで見る時に比べて花と葉の判別がしにくくなり、おとなしく落ち着いた雰囲気に見えませんか?

ほぼ赤と緑で構成された写真は明度や彩度でのメリハリが付きにくい状態の中、色の違いによってだけフルパワーでボクシングしているような状態になっているわけで、目がチカチカしたり落ち着きがなかったりしやすくなるのも道理なわけです。ではどうするのか?ということを考えてみましょう。

明度と彩度でコントロールする

編集方針

もとは色の状況的になかなかまとまらない状態でしたが、明度と彩度をコントロールすることでバチッと決まる状態へ持っていきます。

噛み合わない最大の要素は明度が近すぎることでしたので全体のコントロールとして、赤をやや明るく緑を暗く落としました。赤の明度アップをややレベルで抑えたのは彩度も同時に保つためです。一方の緑は明度をグッと落とすことで彩度も同時に下げています。これによって明度のコントラストをつけつつ強彩度同士のコンフリクト(干渉)を緩和することができるわけです。

今回は標準的な露出の写真を色の調整でコントロールしてみましたが、ハイキーやローキーに振るというのは露出で似たようなロジックを動かしているということです。

自然と色の対比が上手くハマってしまう例

この色の性質を逆の視点から見てみると…

桜は最初っから色構成が決まってる

桜の写真などは標準的な露出で撮っても最初から色のバランスがキマっているということになりますね。また、朝焼けや夕焼けなどは明度・彩度・色相の関係がもともとベストバランスに近い組み合わせだったりします。その辺りの話は以前に記事にしていますのであわせてお読みください。

ロジックは裏切らない